「ファイトケミカル」という言葉が最近よく聞かれるようになりました。テレビの健康情報番組や雑誌などで取り上げられているのをご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか?今回はその高い健康効果が注目されているファイトケミカルについて解説いたします。
スポンサードリンク
ファイトケミカルとはいったい何か?
ファイトケミカルの「ファイト」はギリシャ語で「植物」という意味です。英語の”fight”(戦う)とは全く関係のない言葉で、綴りは”phyto”になります。「ケミカル」(chemical)は化学物質という意味なので、「ファイトケミカル」は「植物由来の化学物質」という意味になります。「フィトケミカル」と表記されることもあります。
ファイトケミカルは、植物が紫外線や有害物質、害虫や外敵などから自身を守るために作り出す物質です。野菜や果物、穀類や豆類、海藻などの植物性の食品に、色素や香り、苦味や辛味、アクなどの成分として含まれ、通常の身体機能維持には必須ではないものの、健康によい影響を与えるかも知れない化合物がファイトケミカルだとされています。その種類は数千種類ともいわれ、今後も成分の特定技術の進歩に伴ってさらに増えていくのは間違いありません。
ファイトケミカルは、たんぱく質や糖質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素とは異なり、摂取量が少ないからといって欠乏症が起こることはありません。また生活活動のエネルギーにもなりませんが、病気を予防する効果があり、健康を保つために必須の成分であるとして、その様々な機能性が注目されています。
がんや老人性認知障害、動脈硬化や心筋梗塞などの発症は、活性酸素と因果関係があるといわれていますが、ファイトケミカルには強い抗酸化作用を持ち、アンチエイジング効果も期待できる機能性成分が多く含まれます。そこで、常日頃から積極的に抗酸化物質を摂取することが大切だという考え方が広まってきているのです。
スポンサードリンク
ファイトケミカルの健康効果と成分を含む食品の一覧
ファイトケミカルには、強力な抗酸化作用を持つものが多く、老化予防の効果が期待されます。その他にも代謝の促進や免疫力の強化、脳機能の強化など、様々な効果が期待されています。私たちが日常的に摂取している野菜や果物をはじめ、ほとんどの食品に含まれています。一日に、野菜350g以上、果物200gを目安に、種々の食品をバランスよくとることを心がけましよう。
一般的にファイトケミカルの有効成分は
- 野菜の皮
- ニンジンや玉ねぎのへた
- 根っこ
- ちょっと硬いところ
など、日頃はゴミとして捨てられているこれらの箇所に、豊富なファイトケミカルがぎっしり詰まっているとされています。小さく刻んだり、味付けを工夫したり、煮汁を料理に使用したり、ミキサーにかけてジュースにするなど、 調理方法に少し手間を加え、できるだけ摂取することがおすすめです。
栄養成分としては、大きく分けるとポリフェノール、カロテノイド、香気成分(テルペン類)、硫黄化合物、多糖類などに分類されます。
ファイトケミカルの成分・働き・多く含む食品一覧
ポリフェノール
強力な抗酸化作用が特徴です。ほとんどが水溶性のため、摂取の3~4時間後には排泄されます。
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
アントシアニン | 赤や青、紫などの水溶性色素。目の網膜にあるロドプシンという色素成分の再合成を促す働きがある。 | ベリー類、ぶどう、なす、赤しそ、梅干し、黒豆、小豆など |
クルクミン | 黄色の色素。胆汁の分泌を促進する働きがあり、肝臓の機能強化などの効果が期待されている。 | しょうが、マスタード、ターメリック(ウコン)など |
カテキン | 茶葉に含まれる苦味・渋味成分。抗酸化作用、抗菌作用のほか、血圧の上昇を抑えたり、血中コレステロールを低下させたりする作用などがある。 | 緑茶、紅茶など |
クロロゲン酸 | 苦味成分。抗酸化作用のほか、脂肪の蓄積を抑えたり、血糖値の上昇を抑制したりする働きがある。 | コーヒーなど |
ショウガオール | 香りと辛味の成分。強力な抗菌作用のほか、腫れや痛みを抑える消炎作用がある。 | しょうが |
イソフラボン | 女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをするため、更年期症状の緩和や骨粗鬆症予防などの効果が期待されている。 | 大豆、大豆製品など |
セサミン | 強い抗酸化作用をもつ。コレステロールや血圧を低下させる作用や肝臓の機能を高める効果が期待されている。 | ごま |
へスペリジン | 抗酸化作用のほか、末梢血管を強化する作用があるため、冷え性や高血圧の予防、コレステロールを低下させる効果が期待されている。 | 温州みかん、はっさくの果皮など |
カロテノイド
強い抗酸化作用をもつ天然の脂溶性色素。カロテン類、キサントフィル類大別されます。
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 | |
カロテン類 | β-カロテン | 黄色または橙色の色素。体内でビタミンAに変わるプロビタミンA(前駆体)。夜間の視力の維持を助けたり、皮膚や粘膜の健康維持を助けたりする働きがある。 | にんじん、かぼちゃ、ほうれん草など |
リコピン | 赤い色素成分。強力な抗酸化作用がLDL(悪玉)コレステロールの酸化を抑え、血流を改善するとされている。 | トマト、すいか、ピンクグレープフルーツ、あんずなど | |
キサントフィル類 | アスタキサンチン | 甲殻類の殻に存在するカロテノイドで抗酸化作用がある。たんばく質と結合し無色だが、加熱してたんばく質が変性すると赤色を示す。 | えび、かに、さけなど |
ルテイン | 黄色の色素成分で高い抗酸化力がある。目の健康によいとされている。 | 緑黄色野菜、卵黄など | |
β-クリプトキサンチン | 黄色い色素成分。強い抗酸化作用を持ち、高血圧や糖尿病、動脈硬化、骨粗鬆症などの予防効果も期待されている。皮膚にも存在し、美肌効果もある。 | 温州(うんしゅう)みかん、ぽんかんなど | |
カプサンチン | 赤色の色素成分。抗酸化作用があり、動脈硬化予防、がん抑制、脂肪燃焼促進などの効果も期待されている。 | とうがらしなど |
香気成分(テルペン類)
植物の精油成分に多く含まれます。抗酸化作用や免疫力強化などの働きがあるとされています。
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
リモネン | 香り成分。リラックス効果があるとされ、交感神経を活性化させ血管を広げることで、血流改善効果が期待されている。 | 相橘類(とくに皮) |
メントール | 香り成分、免疫力を高める作用があるとされている。 | ミントなどのハーブ類 |
硫黃化合物
刺激のある香りが特徴で、強い殺菌効果があるため、食中毒予防や薬味として活用されます。
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
アリシン | にんにくなどを刻んだりして、細胞が壊れたときに、アリイナーゼという酵素が働いてできる成分。アリシンは不安定で硫化アリルに変わり、これが臭気のもととなる。抗がん作用や抗菌作用をもつほか、ビタミンB1と結合してアリチアミンに変わり、疲労回復に役立つといわれている。 | にんにく、にら、玉ねぎなど |
イソチオシアネート | 無味の配糖体のシニグリンが、すりおろすなどして細胞が壊れたときにミロシナーゼという酵素の作用で酸化分解して、生成される辛味成分。免疫力の強化や抗がん作用があると期待されている。 | アブラナ科の大根、からし菜、わさびなど |
スルフォラファン | イソチオシアネートの一種で抗酸化作用、抗がん作用があるとされる。 | ブロッコリー(特にスプラウト)、キャベツ、カリフラワー、大根など |
多糖類
炭水化物の一種で、海藻やきのこ、根菜類に多く含まれます。
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
フコイダン | 海藻類のぬめり部分に含まれる細胞間粘質多糖。抗がん作用のほか、血圧を安定させる作用などが期待されている。 | 海藻類など |
イヌリン | 複数の果糖が結合した物質。血糖上昇の抑制や血液中の中性脂肪を低下する作用が期待されている。 | ごぼう、チコリ、玉ねぎなど |
β-グルカン | 免疫力強化やコレステロール値上昇抑制などの効果が期待されている。 | キノコ類など |
※「ムチン」について
やまのいも、オクラ、なめこなどのぬめり成分を「ムチン」と呼ぶことがありますが、最近の研究ではムチンは植物には含まれていないことがわかってきました。植物のぬめり成分は高分子の多糖類とたんぱく質が結合したもので、本来の動物の粘膜に含まれるムチンとは異なります。
まとめ
今回は近年注目が集まる栄養物質「ファイトケミカル」について紹介いたしました。がんやアンチエイジングに高い効果が期待できますので、ぜひ積極的に摂り入れてみてください。
スポンサードリンク