アメリカの国立がん研究所で、植物性食品に含まれる抗がん成分を研究し、その成分の効果を高めて、最終的にはがん予防のために設計された食品「デザイナーフーズ」の開発を目的とした「デザイナーフーズ・プログラム」が進行しています。
このデザイナーフーズの候補にあがった植物性食品は約40種類。その中でも特に高い評価を受け、トップワンに位置づけられた食材が「にんにく」です。
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にんにくに含まれる栄養成分
にんにくの発がん抑制効果が注目されるきっかけとなったのは、1990年代前半にアメリカと中国が共同で行なった疫学調査です。
その時の調査によると、にんにくを年間1.5kg食べている人は、ほとんど食べない人と比較して、胃がんの発生率が半分も抑えられていたのです。イタリアの疫学調査でも、ほぼ同様の結果が得られました。
その後に行なわれた数々の調査・研究からも、ニンニクががん、中でも胃や大腸など消化器系のがん予防に有効であるという報告がなされています。その中には、ニンニクを食べると、胃がんや胃潰瘍の発生原因として、今注目されているヘリコバクター・ピロリ菌の感染が防げるという報告もありました。
では、にんにくのどんな成分ががん予防に働くのでしょうか。にんにくの特徴である強烈な匂いの正体は、アリシンなど数十種類の硫黄化合物ですが、これが強力に殺菌するだけでなく、がん予防に有効に働くと考えられています。
にんにくの成分と効用
栄養素 | はたらき |
硫黄化合物 | がんの予防、がん・腫瘍を抑える |
S-アリルシステイン | 動脈硬化の予防 |
テルペン | がんの予防 |
イオン化合物 | 老化防止 |
アリシン | ピロリ菌に対する抗菌作用 |
食中毒の予防・改善 | |
殺菌・抗菌作用 | |
アリキシン | がんの促進を抑える |
セレン | がんの予防 |
ビタミンB1 | 疲労回復 |
スコルジニン | 新陳代謝を高める |
にんにく5g中の主な栄養成分
ニンニクに含まれる主な栄養成分はビタミンC・E・B1、食物繊維などがあ挙げられます。
栄養素 | 含有量(5g中) |
ビタミンC | 0.5mg |
ビタミンE | 0.025mg |
食物繊維 | 0.29g |
ビタミンB1 | 0.027mg |
その他に抗がん成分として、アリキシン、イオウ化合物、テルペン、 セレンを含んでいます。
にんにくの成分で注目したいのは、におい成分のアリシンです。強い抗菌作用をもち、胃潰瘍再発の原因となりやすいピロリ菌や、食中毒を起こさせる菌に対して、これを殺菌したり除菌する効果があります。魚や肉を生のまま食べる時には是非一緒に摂ると良いでしょう。
にんにくに含まれる栄養成分の健康効果
ニンニクには抗がん作用のある成分
・硫黄化合物
・アリキシン
・セレン
・テルペン
などが含まれています。
硫黄化合物
食品添加物や薬剤、タバコ、紫外線などに存在する発がん物質が影響すると、体内に活性酸素を大量に発生させ、この活性酸素が細胞を酸化して傷つけます。これによってがんが発症します。
ジアリルペンタスルフィドなどのニンニクに含まれる硫黄化合物には、これらの発がん物質の毒性を消す働きをもつ解毒酵素を活発にする作用(解毒酵素誘導作用)のほか、活性酸素を除去する強力な抗酸化作用があります。硫黄化合物のうち、S-メチルシステインは肝臓がん、大腸がんを抑制することが注目されています。
にんにくは、そのにおいのために敬遠されることが多いことから、最近では硫黄化合物であるこのニオイを減らしたにんにく製品が数多く開発されていますが、こうした製品にもがん抑制に十分有効であることが明らかになっています。このことは、にんにくに硫黄化合物のほかにも、発がん抑制効果のある成分が存在する証拠といえます。
アリキシン
アリキシンという物質は、にんにくが傷がついたり、加熱されたり、外から物理的な力が加わった時に自分を守るために生成される自己防御物質です。
アリキシンにも発がん抑制作用があることは、マウスの実験によって明らかになっています。がん細胞は
①遺伝子の異常が生じるイニシエーション
②がん化を促進する刺激が繰り返し伝わるプロモーション
の2段階を経て発生します。アリキシンは、このうちのプロモーション段階を抑制する作業があることが証明されたのです。
セレン
更ににんにくには、土壌中に含まれるセレンというミネラルを吸収して溜め込む性質があります。セレンも注目されているがん予防物質の一つです。
【ニンニクの抗がん効果の実験事例】
アメリカ・南カロライナがんセンターの実験によれば、大腸がんを起こす発がん物質を投与したラットは、30匹中19匹の高率で、大腸に腫瘍が発生しましたが、発がん物質とにんにく(硫黄化合物の一種)を混ぜたエサを与えたラットは30匹中8匹しか腫瘍が発生しなかったという実験データが発表されています。
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にんにくの栄養成分を損なわない効果的な食べ方
ニンニクのおすすめの摂り方
にんにくのがん予防効果は、生のままでも加熱しても有効です。硫黄化合物の種類によっては、なるべく加熱を避けて、生に近い状態で摂ったほうが良いと言われるものもありますが、前述のようにニンニクには複数の抗がん成分が含まれているので、有効成分が多少損なわれたとしても大きな問題にはなりません。
にんにくを丸ごと網で焼いて、そのまま食べても良いし、細かく刻んで野菜炒めやパスタなどの香り付けに使ってもいいし、おろして焼き肉のタレやラーメンなどに入れるのも良いでしょう。にんにくは幅広く使えるので、毎日の食生活に積極的に取り入れたいものです。
においが気になるという人は、傷をつけないように皮をむいて、そのまま加熱を。にんにくは加熱をすると、においが弱くなるからです。また、牛乳屋チーズ、肉、魚、鶏卵など、タンパク質の多い食品と一緒に摂ると、ニオイのもとである硫黄化合物がたんぱく質と結合するので、においがカバーされます。パセリもにんにくの匂い消しに有効なので、にんにく料理の付け合わせにすると良いでしょう。
食後には歯を磨くのも忘れずに。うがいをするだけでも効果があります。
一日一かけ、食べすぎに注意
「1年間にニンニクを1.5kg食べている人にはがんが少なかった」と記しました。この調査結果をもとに、にんにくの有効量を計算すると、1日約5g。これはニンニク一かけに相当します。この程度の量なら、毎日無理なく摂ることができるはずです。
むしろニンニクは刺激が強いので、食べ過ぎは禁物です。特に空腹時に多量摂取するのは、胃を痛めるので注意してください。生なら1日1かけ、加熱したものなら2〜3かけを目安に摂りましょう。ただし子供や高血圧の人は、この半分以下にとどめるようにご注意ください。
にんにくがスタミナ食と言われる理由
にんにくに滋養強壮作用があることは昔から知られており、疲労回復や精力増強にはニンニクを食べるように勧められています。これには、ビタミンB1が関係しています。B1は”疲労回復のビタミン”と言われ、全身の細胞が糖質を燃やしてエネルギー に変える時に必要な成分です。
B1が不足すると、糖質のエネルギー代謝が悪くなるために、慢性疲労のほか、気力減退、イライラ、集中力や記憶力の低下などの症状も現れてきます。糖質は脳の唯一のエネルギー源でもあるので、心身ともにエネルギー不足の状態になってしまうわけです。
B1を補給する際には、にんにくを一緒に食べると更に効果がアップします。B1はニンニクに含まれるアリシンと結合すると、活性持続型のアリチアミンに変化するからです。
つまりニンニクには、体内のB1の疲労回復効果を高めて、長続きさせる効果があるわけです。餃子のように、B1の豊富な豚肉やニラ+ニンニクの料理は理にかなった食べ方と言えます。
【レシピ】常備食になるニンニクの味噌漬け
味噌漬けにして冷蔵庫で保存しておくと、いつでも食べられるので便利。疲労回復の時にもおすすめです。
①にんにくの皮をむいて、1かけずつにほぐしてから、10分ほど蒸し器で蒸す。すぐに味噌に漬けず、常温まで冷ます。
②バットとかタッパーに味噌を1〜2cmの厚さに敷き、にんにくをのせる。更に上からニンニクがかぶる程度の味噌をのせる。
③1週間ほどで食べられる。
まとめ
今回は抗がん作用がもっとも高いと言われる食材「ニンニク」について、その栄養成分や効果的な摂り方などを紹介いたしました。滋養強壮効果が高いことは以前から知られていますが、がん予防にも効果が期待できるのですから、いままで以上に積極的に毎日少しずつ食べていきたいものですね。
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