老化現象とは

老化現象による身体的変化の症状やかかりやすい病気など

高齢になると様々な身体的な変化が起こります。個人差が大きく、年齢による共通性は少ないのですが、共通して見られる生理的変化があります。中には病気に起因するものも多く、注意が必要です。高齢者の病気の特徴は以下の通りです。

  1. 正常との境界が不明瞭
  2. 病気の症状が非定型的
  3. 若年者と異なる薬の作用・副作用が出やすい
  4. いったん入院すると長期化しやすい

また、具体的にかかりやすい疾患や身体的な変化は主に次のようなものが挙げられます。

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臓器の重量の低下

80歳代になると、内臓の重量に変化が現れます。変化の内容は、

  • 膵臓:1/2
  • 肝臓:2/3
  • 脳・腎臓:4/5

など、ほとんどの臓器の重量が低下します。心臓は肥大する傾向が強いため20%増加します。それは、加齢により上昇した血圧に抗して血液を全身に拍出しなければならないからです。一方、運動障害などで長期間寝たきりになるとか、低栄養などの場合は心臓は菱縮するため重量は低下します。

体内水分の減少

高齢者は若年者に比べて、体重あたりの水分量が減少します。これは、おもに細胞の中の水分が減少するためです。一般的に、若年者の体内水分が61%であるのに対し、高齢者は57%程度といわれています。細胞内の水分が少ないため、何らかのアクシデントがあると、脱水状態になりやすい、向精神薬が効きにくい、水溶性の消炎鎮痛剤が効きすぎるなどの現象が起きやすくなります。

発熱に伴う脱水が起こりやすいだけでなく、脳が口渇を感知・認識しにくくなっているので、頻繁に水分を摂取する生活が必要です。

高齢者が口渇を訴えなくても水分を補給できる工夫をしたり、飲みやすいものを用意するなど、家族や周囲の人々が意識的に水分補給を促す配慮が重要になります。

恒常性の低下

高齢者は、暑さや寒さに対する感覚が鈍くなっており、気温の変化に対して身体の反応が弱くなります。これを恒常性の低下と言います。

体温調節は、脳の視床下部の体温(温熱)中枢と、皮膚の血管、呼吸、汗腺、筋肉などの調整によって行われています。通常、暑いときは、まず筋肉を弛緩(しかん)して熱の発生を少なくします。さらに、皮膚の血管を拡張して大量の血液を循環させることで、熱の放散を大きくし、発汗を盛んにすることで熱を奪い、体温を下げますが、高齢者は、暑くても汗をかきにくくなっているので、皮膚の血流量が増えません。

また、通常、寒いときは、皮膚筋が収縮して鳥肌にしたり、筋肉を運動したりすることで熱の発生を盛んにします。さらに、皮膚の血管が収縮し、血液から熱が失われるのを防ぎますが、高齢者の場合は逆に、寒くても血流量が減らないので身体の熱が逃げやすく、身体が冷えやすくなります。

廃用症候群

身体を使わないことにより生じる機能低下症状を総称して廃用症候群といいます。高齢者は、些細なきっかけで廃用症候群を起こしやすくなります。廃用症候群のおもな症状は以下の通りです。

  • 骨:骨粗鬆症
  • 関節:拘縮、尖足
  • 皮膚:薄く裂けやすい、褥瘡ができる
  • 心臓機能:低下して起立性低血圧
  • 消化機能:食欲不振、便秘
  • 周囲の事柄に無関心:精神活動性の低下

栄養摂取障害・嚥下障害

高齢者における栄養摂取の変化には、食べものを口にしない、できない摂食障害と、食べものを口から胃に運ぶ過程に異常のある嚥下障害があります。

摂食障害

食べものが大腸を通過する時間が延長して便秘傾向が強まったり、消費エネルギーの少なさによる空腹の欠如からくる食欲低下が原因です。高齢者の低栄養の原因はたんぱく質エネルギー栄養障害が大部分です。低栄養状態になると低アルブミン血症を引き起こし、免疫機能が低下し、易感染性や褥瘡ができやすく治りにくくなります。栄養摂取状態のチェック、BMI、血液検査による生化学データの診断などで確認をするようにしましょう。

嚥下障害

高齢になると、義歯の不適合や咳反射の低下、神経疾患などにより飲食物をうまく嚥下できなくなったり、吐き出すことが難しくなります。食事がスムーズに摂取できないことからくるQOL(生活の質)の低下に注意する必要があります。

肺に食べものが入ることで起こる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。気管支は、右側が左側に比べ太く角度が緩くなっているので、誤嚥物は右側の肺に入りやすくなっています。病院で、水飲み試験、嚥下造影(Videofluorography)などの診断によって嚥下機能の評価を受けるようにしましょう。

<正しい嚥下のメカニズム>

  1. 口腔期:食べものが口腔から咽頭に送られます。
  2. 咽頭期:喉頭筋が弛緩(しかん)して食道入口部が開き、鼻咽腔が閉鎖して気管を閉じます。
  3. 食道期:嚥下反射により喉頭蓋が気管入り口を塞いで、嬬動運動によって食べものが食道に入ります

<嚥下が困難になる原因>

  • 口腔期の問題:
    唾液の分泌量の低下によって飲み込みが難しく、むせが生じます。歯の脱落や義歯が合わないなどの口腔内のかみ合わせが悪い場合にも問題が生じます。認知症などでは食事を口に入れても咽頭期に至らないなど、摂食行為が低下します。
  • 咽頭期の問題:
    加齢に伴う嚥下反射の低下で食べ物が気管内に送り込まれ誤嚥をします。むせが起こらないので見過ごしたり、夜間に唾液などが静かに気管に入るなども不顕性誤嚥として肺炎の原因になります。

便秘

加齢に伴い、運動の低下、腹筋の低下、腸の蠕動運動の低下などによって、便秘になりやすくなります。

<便秘の種類>

  1. 器質性便秘
    手術後、腸の癒着によって起こる便秘
  2. 機能性便秘
    ・弛緩性便秘:高齢者に多く、腹筋の低下や運動不足で腸の蠕動運動が弱くなって起きる便秘
    ・痙攣性便秘:大腸の収縮が強すぎて、便を肛門へ送り出せない状態で起きる便秘
    ・直腸性便秘:排便を我慢しすぎて、中枢神経からの刺激による排便反射が起きる便秘
  3. 過敏性腸症候群
    ストレスなどが原因で便がなかなか出てこなくなった状態

胃に食べものが入ると結腸の蠕動が起こり、結腸の内容物が直腸に送られます。これを胃結腸反射と言います。朝、目覚めた後もしばらくは副交感神経が優位に働いているので、肛門括約筋が緩みやすくなっています。朝食後にゆっくりしていると排便反射が起きやすくなります。排便の習慣は朝がよいというのは根拠のあることなのです。

<便が排泄されるまでの感知の仕方>

  1. 直腸に糞便が送られると腸壁が押され、直腸壁の内圧が30〜50mmHgくらいに高まる。
  2. 脊髄〜大脳で便意を感じ、便器に座ると、肛門括約筋が弛緩して排便が始まる。

肛門括約筋は、内括約筋(自分の意思とは無関係に働く不随意筋)と外括約筋(意思で働く随意筋)によって成り立ち、便が漏れないようになっています。

<食べ物が便になるまでの通り道>

  1. 小腸:食べものは膵液や月胆汁と混ぜ合わされて液状になり、栄養素が吸収されます
  2. 上行結腸(じょうこうけっちょう):腸内細菌で分解され、水分が吸収されて泥状になります
  3. 横行結腸:さらに分解されて、水分が吸収されます
  4. 下行結腸(かこうけっちょう):さらに分解が進み、水分が吸収されます
  5. S状結腸:消化されずに残ったものが便になり徐々に固まっていきます
  6. 直腸:便が直腸壁を刺激して便意が起こります
  7. 肛門:直腸が収縮して肛門括約筋が緩み、便が排出されます

骨粗鬆症

加齢に伴って骨内のカルシウムやたんぱく質が減少して隙間だらけになり、骨折しやすい状態になります。特に女性は、閉経期を過ぎる頃から、その減少が加速します。喫煙、大量の飲酒、カルシウム摂取の不足なども減少させる要因になります。検査は、骨塩定量、成長ホルモンや女性ホルモンなどのホルモンの血中濃度を測定します。

骨折の好発部位は脊椎椎体(圧迫骨折)、橈骨遠位端部(とうこつえんいたんぶ=手首)、大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ=足のつけ根)です。

尿失禁

加齢に伴い、膀胱や尿道の筋肉が弱くなって失禁しやすくなります。高齢者に多く見られるのはトイレに間に合わず失禁してしまう切迫性尿失禁です。

咳や、くしゃみ、笑い、運動、重いものを持ち上げたときなどの腹圧上昇時に少量漏れ出るのを腹圧性尿失禁といい、中高年の女性に多く見られます。

聴覚障害(老人性難聴)

加齢に伴い、難聴になりやすくなります。高齢者に多いのは、感音性難聴(内耳から大脳までの経路の障害)で、補聴器の効果はあまりありません。特に高い音が聞き取りにくいので、高齢者に話しかけるときには、低めでゆっくりと話すと聞き取りやすくなります。耳介から内耳までの経路の障害で起こる伝音性難聴には補聴器の効果が期待できます。

視覚障害

加齢に伴う視覚障害には以下のものがあります。

白内障

水晶体を構成する無色透明のたんぱく質が白く混濁する視覚障害→目に入る光がさえぎられ曇りガラスを通しているように白く濁って見えたり、光が乱反射するので、まぶしく感じます。

緑内障

眼圧の上昇により視神経が圧迫されて起こる視覚障害で失明の危険性があります。

加齢黄斑変性

網膜のほぼ中心に位置する黄斑には、視細胞が集中しています。老化に伴って黄斑の細胞が萎縮したり、老廃物が溜まったりして機能が低下します。さらに、炎症や異常な血管の発生により出血などが起こると、視界の中心、つまり一番見たいところが、見えづらくなります。近年、日本人にも急増している病気です。

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老化現象チェックのための老化度判定検査

老化度を判定する検査として、以下のものがあります。

身長、体重、体脂肪率 骨年齢の測定 前腕部分をX線で撮影し、コンピュータで骨量を測定します。
血管年齢の測定 四肢血圧測定と同時に脈波伝播速度等も自動計測し、動脈硬化の進行度や下肢動脈の狭窄・閉塞を判定します。
血液検査 加齢や老化に関係する成長ホルモンや女性ホルモンなどの数種類のホルモンの血中濃度を測定します。
酸化ストレス度、抗酸化力測定 加齢に関与している酸化ストレスマーカー(血液における活性酸素・フリーラジカルによる代謝産物)を測定します。
高次脳機能検査 前頭葉機能の評価、判断力や反射神経、運動の状態などの測定を行います。
問診、評価  自身の加齢度を評価します。

治療の一環として個々に疾患別に行われる場合は、たとえば、脳血管疾患や心疾患の患者では血管年齢の測定を定期的に行ったり、大腿骨頸部骨折患者やホルモン治療の副作用による骨粗鬆症患者では骨年齢の測定を行い、再発予防に役立てています。

また、自費での検査として、成人検診や脳ドックでこれらの検査を受けることができ、加齢や老化の進行を遅らせるための早期発見、早期治療、生活指導を行うことができます。

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